オブジェ邸2011/08/19

普段良く通る住宅街に忽然と出現した、異相の家。なぜ突然現れたのかというと、手前にあった家が取り壊されたため、今まで人に見られる事が無かったその姿が、あらわになった為です。家主自身の手によると思われる補修が、いたる所に施され、ひさしにはゴムシートが使われています。ゴムシートという発想は、雨合羽から来ているのでしょうか。本来なら堅い素材の場所に柔らかな素材が来ると、不思議な生命感が宿ります。不等間隔に打ち込まれた亜鉛釘の頭が、オフビートなリズムを刻み、ここまで家主の手が入ると、これはもうりっぱなオブジェ作品と呼ぶべきかもしれません。
銀座の裏通りを歩いていると、古いビルが解体されたその奥に、不思議なマチエールとコンポジションの壁面を見かける事が良くあります。建物は正面玄関より、むしろ隠れて見えない側面にこそ、その本性が現れるような気がします。この家もまさかこの側面が、人目に晒されるとは思っていなかったでしょうから、手前の家が解体されたときは、さぞうろたえた事でしょう。
幸か不幸か、このオブジェ邸の前には、既に新築物件が建ち始めており、この家が再び人目につく事は、おそらくもう2度と無くなりました。僅か1ケ月程の御開陳でしたが、貴重な作品を見させていただきました。自分が立体作品を創る上で、参考になったかというと、それはまた別問題ですが…。